労災保険は、仕事中や通勤中のけが・病気に備える国の保険です。入管の運用要領でも、労働者を1人でも使う事業場には、原則として法律上当然に労災保険が適用されるとされています。特定技能の人も、この保険で治療と休業の給付を受けます。手続きは日本語の書類ばかりなので、会社と登録支援機関の手助けが欠かせません。
事故の直後にすることは?
- 1治療を受けさせる救急が必要なら呼び、病院で「仕事中のけが」と伝える
- 2通訳を付ける委託先の担当者か通訳に、病院で本人の言葉で説明してもらう
- 3状況を記録するいつ・どこで・何をしていて・どうなったかを、図や写真で残す
- 4労災の請求を相談する請求の書類を、会社が本人と一緒に準備する
厚生労働省の指針では、外国人の労働災害が起きたら、会社は労災保険の請求などの手続きについて、本人や家族の相談に応じるとされています。本人や家族が手続きできないときは、手続きができるよう援助することも求められています。
病院への同行の費用は、会社の負担です。入管の支援の運用要領では、通院などに同行する支援担当者の交通費や日当は、会社などが負担するとされています。
委託先に頼むと、追加料金になることがあります。たとえばホワイトローズインターナショナルは、医療機関の通訳・同行支援を1回2万〜3万円(税区分は要確認)と公式に書いています(交通費は別料金)。契約の前に、事故のときの同行が月額に入るかを確かめてください。
休んでいる間のお金はどうなる?
仕事中のけがで休んだら、労災保険から休業の給付が出ます。
- 休業4日目から、1日につき給付基礎日額の60%(休業(補償)等給付)
- 休業4日目から、1日につき給付基礎日額の20%(休業特別支給金)
給付の額のもとになる給付基礎日額は、労働基準監督署が決めます。
仮に、給付基礎日額が1万2,000円の人が、仕事中のけがで30日休むとします。
- 休業(補償)等給付
- 1万2,000円 × 60% × 27日 = 19万4,400円
- 休業特別支給金
- 1万2,000円 × 20% × 27日 = 6万4,800円
※ 4日目から30日目までの27日分です。数字は例です。
労働基準監督署には何を出す?
労働者が労働災害で休んだら、会社は報告を出します。労働災害などで死亡・休業したときは、遅滞なく電子申請で労働基準監督署長に報告する(労働安全衛生規則97条1項)とされています(労働者死傷病報告)。
休みが短い場合は、出し方が変わります。休業が4日未満なら、3か月ごとにまとめて、その期間の最後の月の翌月末日までに報告する(同条2項)とされています。外国人の報告には、国籍・地域と在留資格の区分も書くことになっています。
入管の運用要領にも、受入れ中に死亡したり労働災害が起きたりしたときは、労働基準監督署や警察に届け出るなど適切に対応すると書かれています。
入管には何を出す?
休業が長くなると、入管への届出が要ります。産休・育休・病気やけがの休業などで1か月以上働けないときは、受入れ困難の届出の対象とされています。期限について、入管の案内では受入れ困難の届出は、退職や1か月以上働けない原因になる事由が生じた日から14日以内(実際に退職した日などではない)とされています。
1か月以上働けないときは「1か月以上の活動未実施期間が生じた際の状況説明書」(参考様式第5-14号)に具体的に書いて付けるとされています。届出の様式と出し方は特定技能の届出一覧で確かめられます。
休業の長さで、出すものをまとめると次のとおりです。
| 休業の長さ | 労働基準監督署 | 入管 |
|---|---|---|
| 4日未満 | 3か月ごとにまとめて報告 | 要らない |
| 4日以上1か月未満 | 遅滞なく報告 | 要らない |
| 1か月以上 | 遅滞なく報告 | 受入れ困難の届出 |
休んだ期間は、通算5年に数える?
労災で長く休んだ期間は、条件を満たせば通算5年に数えません。運用要領では、病気・けが(労災を含む)で働けない休業期間も、資料で確かめられれば通算5年に含めないとされています。
- 長さ:病気・けがの休業は原則1年以下、労災による休業は3年以下が対象とされています。
- 連続:病気・けがの休業は連続して1か月を超える期間が対象で、数日の自宅療養や、ときどきの通院で働けない場合は対象外とされています。
- 資料:労災の場合は、労災保険の支給決定通知書の写しを出すとされています。
この扱いには、届出が条件として付いています。休業を通算に含めない扱いを受けるには、休業の原因が起きたときに遅れずに受入れ困難の届出をしていることが必要とされています。1か月以上休むと分かった時点で、入管への届出を済ませてください。
再発を防ぐには?
厚生労働省の指針では、安全衛生教育について安全衛生教育は、母国語や視聴覚教材を使うなど、本人が理解できる方法で行うとされています。日本語の掲示や口頭の注意だけでは、伝わっていないことがあります。
事故のあと、同じ作業の手順書を本人の言葉で作り直すと、ほかの外国人の従業員にも使えます。支援の中身と、委託先から受け取る記録は義務的支援10項目と確認方法で確かめられます。事故は夜間や休日にも起きるので、緊急時の連絡先を登録支援機関の夜間・土日対応の手順で確かめておきます。
医療通訳や同行を頼める委託先を探すなら、会社一覧で対応する言語と追加料金を比べられます。
次にやること
- 事故の記録(日時・場所・作業・けがの部位)を、図や写真と一緒にまとめます。
- 休業が4日以上になるかを医師に確かめ、労働基準監督署への報告を準備します。
- 1か月以上休む見込みなら、受入れ困難の届出(第3-4号)と状況説明書(第5-14号)を出します。