義務的支援10項目の中身と委託先の確かめ方|項目ごとの時期・時間・方法、受け取る記録の様式番号、受け入れ会社のチェック表
「特定技能」の外国人を受け入れた会社には、その人が日本で働き、暮らしていけるように手助け(支援)をする決まりがあります。必ず行う支援は10項目あり、出入国在留管理庁(入管)は「義務的支援10項目」と呼んでいます。この10項目を、国に登録した「登録支援機関」に任せている(委託している)会社が多くあります。
ただし、任せても、10項目をどう行うかを書いた「支援計画」は受け入れた会社のものです。委託先が1つでもやっていなければ、会社の支援計画が守られていないことになります。
結論
- 委託先が10項目をやったかどうかは、本人が署名した2枚の確認書(事前ガイダンスと生活オリエンテーション)、3か月ごとの面談報告書(本人用と上司用)、相談記録書で確かめられます。どれも入管の参考様式があり、委託先の手元に残る決まりです。
- 最低限、面談のたびに本人用と上司用の2枚の報告書の写しをもらってください。問題が無くても報告書は作る決まりなので、「問題が無かったので作っていません」は通りません。
- 入国の前後に1回だけする2つの説明は、確認書の時間の欄を見ます。事前ガイダンスは3時間程度、生活オリエンテーションは8時間以上が目安で、どちらも本人が分かる言葉で行います。
仮の例:4月1日に入国した外国人1人について、1年目に委託先から受け取る記録仮の数字- 事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号)、入国の前
- 1枚
- 生活オリエンテーションの確認書(第5-8号)、入国のあと
- 1枚
- 定期面談報告書(第5-5号・第5-6号)、3か月ごと
- 2枚 × 4回 = 8枚
- 相談記録書(第5-4号)、相談があった期間の分
- 0枚〜
1年目にそろう記録少なくとも10枚
※ 枚数は、受け取るものを数えるための仮のものです。面談は3か月に1回以上なので、1年に4回で数えています。
※ 相談記録書は、相談や苦情があったときに書く記録です。本人の事情によっては、1年間1件も無いこともあります。
10項目の中身
10項目の名前と、それぞれをいつ行うかは、次の表のとおりです。番号は、入管のページの並び順です。
「申請の前」は、入管に在留資格認定証明書の交付(海外から呼ぶとき)や在留資格の変更(日本にいる人を雇うとき)を申請する前のことです。なので、①の事前ガイダンスと④の生活オリエンテーションを、入国のあとにまとめて行うことはできません。申請の前後の手順と日数は、特定技能の外国人を受け入れるまでの流れと期間で確かめられます。
10項目のうち①・④・⑦と、⑩の本人との面談は、本人が十分に理解できる言語で行う決まりです。母国語でなくてもかまいませんが、本人が中身を余すことなく分かる言葉である必要があります。
技能実習2号から特定技能1号に変わった人のように、状況から見て明らかに要らない支援(たとえば、すでに日本にいる人への入国時の送迎)は、しなくてよいことになっています。それ以外は、1つでもやっていなければ、支援計画どおりに支援していないことになります。
入国の前後に1回だけする支援(①〜④)
委託先の仕事の中で、やったかどうかがいちばんはっきり分かるのが、この4つです。本人が署名する確認書が2枚残るからです。
生活オリエンテーションの確認書(第5-8号)の見本数字は仮
| 説明を受けた事項 | 6つの事項 | ① |
| 実施した日時 | 3月2日 13時〜17時 | ② |
| 実施した日時 | 3月3日 13時〜17時 | ② |
| 機関の氏名又は名称 | 〇〇登録支援機関 | ③ |
| 説明者の氏名 | 〇〇 〇〇 | |
| 特定技能外国人の署名 | 署名・4月1日 | ④ |
- ①「日本での生活一般」から「法的保護に必要な事項」までの6つが印刷されていて、全部について説明を受けたことを本人が認める形です。相談先の連絡先や、法律違反に気づいたときの相談先も入っています
- ②日付と時間が、行った日ごとに書かれています。合計が8時間以上か、1回目の日付が入国の日(または在留資格の変更の日)から遅れていないかを見ます
- ③支援を全部任せているときは、委託先の登録支援機関の名前が入ります。会社の名前が入っていたら、委託先に理由を聞きます
- ④本人の署名と日付です。説明を受けた日より前の日付になっていないかを見ます。この確認書は入管に出す書類ではなく、委託先が保管します
- 事前ガイダンスは、対面かテレビ電話などで、顔を見ながら本人確認をして行います。文書を郵送したり、メールを送ったりするだけでは認められません。目安は3時間程度で、同じ会社で続けて雇う元技能実習生のように日本の暮らしに慣れた人でも、1時間に満たないと適切に行ったとはいえません。確認書は参考様式第5-9号で、見方は生活オリエンテーションの確認書と同じです。
- 生活オリエンテーションは、入国のあと(在留資格の変更のあと)に遅れずに行い、8時間以上が目安です。同じ会社で続けて雇う元技能実習生や元留学生で生活環境が変わらない人でも、4時間に満たないと適切に行ったとはいえません。動画を見せる形でもよいのですが、本人の質問に答えられる体制が要ります。
- 送迎は、入国のときは空港と会社(または住まい)の間、帰国のときは空港の保安検査場の前まで同行して、入ったことを確かめるところまでです。一時帰国の送迎は入りません。
- 住まいは、1人あたり7.5㎡以上の広さが求められます。部屋・銀行口座・携帯電話の契約の手伝いは、必要なら窓口に同行するところまでが支援です。
事前ガイダンスと生活オリエンテーションが別料金になっている委託先では、代金を払った回と確認書の日付が合っているかも見てください。どの支援が別料金になりやすいかは、登録支援機関の委託料の相場と見積書の読み方で確かめられます。
働いている間ずっと続く支援(⑤〜⑧)
この4つは、「やった」と「やらなかった」の線が引きにくい支援です。なので、委託先がどんな体制で待っているかと、何かあったときの記録が残っているかで確かめます。
相談記録書(第5-4号)の見本数字は仮
| 期間 | 1月1日〜3月31日 | ① |
| 相談受理日 | 1月30日 | |
| 相談者 | 氏名・国籍など | |
| 相談内容 | エアコンの不調 | ② |
| 対応結果 | 修理を依頼した | ③ |
| 対応者の氏名 | 〇〇 〇〇 | |
- ①期間の分をまとめて1枚に書く様式で、相談者の欄には氏名のほか性別・国籍・在留カード番号を書きます。「この期間は相談が無かった」と言われたら、本人に「困ったことを相談しましたか」と聞いて照らします
- ②仕事の相談だけでなく、暮らしの困りごとも相談の対象です。どれも本人が十分に理解できる言葉で対応する決まりです
- ③労働基準監督署に通報したりハローワークに相談したりしたときは、その日付と行政機関の名前も書くことになっています
- 相談・苦情への対応は、1週間に勤務日3日以上と休日1日以上、それに夜間などの就業時間外にも応じられる体制が求められています。委託先に「何曜日の何時から何時まで、電話とメールのどちらで受けていますか」と聞き、本人にも同じ連絡先を知っているかを聞いてください。
- 日本語学習は、教室の案内、教材や講座の情報、講師との契約の3つの方法のどれかを、本人の希望に基づいて行います。案内や手続きの手伝いにかかる費用は会社側(受け入れ会社か委託先)が持ちますが、教室の入学金や月謝まで持つことは望ましい支援とされていて、義務ではありません。
- 役所への同行と日本人との交流は、「必要に応じ」行う支援です。委託先の記録には実施した日時・場所・内容・担当者が残ることになっているので、「この1年で同行や案内をした日はいつですか」と聞けば、記録の有無で分かります。
定期面談(⑩)と転職支援(⑨)
定期面談は、10項目の中で唯一、受け入れ会社の側の人(本人の上司)も受ける支援です。委託先は、本人と、本人に仕事の指示を出す立場の人のそれぞれと、3か月に1回以上面談します。
定期面談報告書(本人用・第5-5号)の見本数字は仮
| 面談日 | 2月15日 | ① |
| 方式 | ☑対面 □オンライン | ② |
| 対応者の役職 | ☑支援担当者 | ③ |
| 面談結果 | 事項ごとに有・無 | ④ |
| 基準不適合等の有無 | ☑なし | |
| 作成年月日 | 2月20日 | |
| 面談実施者の氏名 | 〇〇 〇〇 | |
- ①前回の面談日から3か月を空けていないかを見ます。上司用(第5-6号)の面談日も同じように見ます
- ②オンラインなら、本人が支援計画書の欄で同意しているか、録画を1年以上保管しているかを委託先に聞きます
- ③面談するのは、支援計画書に書かれた支援責任者か支援担当者です。知らない名前なら、担当者が替わったのに届出がされていないおそれがあります
- ④「雇用契約と異なる業務に従事していないこと」「毎月適切に報酬を受け取っていること」など、本人が一つずつ答える欄です。問題「有」の行があれば、その中身と対応を委託先に聞きます
- 報告書は、問題が無くても毎回作り、入管から求められたらいつでも出せるようにしておく決まりです。なので、委託先には「面談のたびに、本人用と上司用の2枚の写しを送ってください」と頼めます。
- オンライン面談には条件があります。本人と上司が同意していること、対面を希望したら対面にすること、問題や第三者の介入が疑われたら改めて対面で行うことです。録画は、雇用契約が終わった日から1年以上保管します。
- はじめての面談と、担当者が替わったあとの最初の面談は対面が望まれ、オンラインを使う場合も1年に1回以上は対面が望まれます。オンラインのときは、始める前に部屋全体を映してもらい、周りに人がいないことやイヤホンをしていないことを確かめることになっています。
- 上司用の報告書(第5-6号)は、上司が「雇用契約と異なる業務に従事させていないこと」「毎月適切に報酬を支払っていること」などに答える形です。面談を受ける上司には、前もって様式を見せておくと答えやすくなります。
面談をする支援担当者の人数が、受け持つ外国人の数に対して足りているかは、2027年4月の改正で今の委託先を続けられるかで確かめられます。
転職支援(⑨)は、人員整理や倒産など会社の都合で雇用契約を解除するときにだけ行う支援で、本人の都合で辞めるときは対象になりません。行ったときは、次の職場探しの手伝いのほかに、求職活動のための有給休暇と、国民健康保険・国民年金などの手続きの情報提供が必ず入り、転職支援実施報告書(参考様式第5-12号)を作って入管に出します。
委託先から受け取る記録の一覧
委託先の登録支援機関は、10項目それぞれについて記録(帳簿)を作り、外国人の雇用契約が終わった日から1年間保存する決まりです。入管の様式が決まっている記録と、様式は無く日時や内容を書く記録に分かれます。
記録を作って持つ義務は委託先にあり、受け入れ会社が写しを持つことまでは決まりにありません。ただし、入管は受け入れ会社に対しても、報告や帳簿書類の提出を命じたり、立ち入って検査したりできます。
また、年1回の定期届出では、別紙1の「支援の実施状況」の部分を会社が委託先と情報を共有して書き、委託先と連名で出します。別紙1には外国人ごとに「支援の形態(自社支援か全部委託か)」と「支援担当者名・電話番号」を書く欄があるので、面談報告書の面談者の名前と合っているかも、この時に見られます。
なので、写しをもらって自社でも持っておくと、入管から聞かれたときも、定期届出を書くときも、委託先に問い合わせずにすみます。委託先を替えるときに前の機関から記録をもらう手順は、登録支援機関を乗り換える手順と届出で確かめられます。
受け取った記録のチェック表
受け取った記録は、次の表の順に見てください。1つでも当てはまらなければ、委託先に理由を聞きます。
記録を見るだけでなく、本人にも聞いてください。「面談はいつありましたか」「困ったときに連絡する人の名前と電話番号を知っていますか」の2つで足ります。
生活オリエンテーションでは、相談を受ける支援担当者の名前と電話番号・メールアドレスを本人に伝えることになっています。なので、本人が連絡先を知らなければ、説明が足りていなかったことになります。
委託先の対応言語(掲載33機関)
事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談対応・本人との面談は、本人が十分に理解できる言葉で行う決まりです。委託先がその言葉で対応できるかは、記録を確かめる前の、いちばん最初の確認点です。
登録支援機関の一覧に載せている33機関のうち、支援で使える言語を公式サイトに書いているのは9機関でした。言語ごとに数えると、次のとおりです。
対応言語を書いていない24機関が、対応できないという意味ではありません。また、書いている9機関のうち2機関は「他」「など」と書いていて、全部の言語は挙げていません。
なので、どの機関にも「◯◯語の面談と相談は、通訳を介さずにできますか。通訳を使うなら誰ですか」と聞いてください。事前ガイダンスの記録には、通訳人の名前も残ることになっています。
やっていないと分かったとき
委託先が支援をしていないと分かったときの順番記録を求める確認書・面談報告書・相談記録書の写し
↓→足りない分の期日を決める「◯日までに面談と報告書を」
↓→
- 委託先が記録を作っていない、または出せないときは、それ自体が問題です。基準に合わないおそれのある中身について相談記録書や定期面談報告書を作らないことは、登録支援機関の「不正行為」に当たるとされています。
- 支援を全部任せている場合、支援ができない事情が起きたときに入管へ報告書(参考様式第4-3号)を出すのは委託先です。自社で支援する会社が出す実施困難の届出(第3-7号)は、全部任せている会社は出しません。
- 委託先は、任された支援を別の会社にさらに任せる(再委託する)ことはできません。面談や相談に出てくる人が委託先の職員でないときは、その場で理由を聞いてください。
委託先を替える段取りと届出は、登録支援機関を乗り換える手順と届出で確かめられます。委託をやめて自社で支援する条件は、特定技能の支援を自社でする条件で確かめられます。
今日やること
- 1手元の支援計画書を開く「Ⅳ 支援内容」の9つの欄で、担当者の名前と、面談の方式(対面かオンライン)に本人が同意しているかを見る
- 2委託先に写しを頼む「事前ガイダンスと生活オリエンテーションの確認書、直近の面談報告書(本人用と上司用)、相談記録書の写しをください」とメールで頼む
- 3本人に2つ聞く「面談はいつありましたか」「困ったときに連絡する人の名前と電話番号を知っていますか」と聞く