農業分野の特定技能|耕種農業・畜産農業でさせられる仕事・直接雇用とJAの請負と派遣の違い・派遣元になれる事業者・雇用経験の数え方・労働時間(労働基準法の適用除外)・試験・農業特定技能協議会
「農業分野」は、特定技能(人手が足りない分野で、一定の技能と日本語の力を持つ外国人が働ける在留資格)の分野の1つです。畑や田んぼ、ハウスで作物を育てる仕事や、牛・豚・鶏などの家畜を飼う仕事をしてもらうためのもので、農林水産省が受け持っています。
この分野で2024年度から2028年度の末までの5年間に受け入れる特定技能1号の人数は、7万3,300人が上限とされています。ほかの分野と大きく違うのは、季節によって忙しさが大きく変わる農業の事情に合わせて、派遣で受け入れることが認められていることと、労働時間・休憩・休日について労働基準法の決まりが当てはまらないことです。
結論
- させられる仕事は、作物を育てる「耕種農業全般」か、家畜を飼う「畜産農業全般」のどちらかです。どちらでも、作物や家畜を育てて世話をする作業が入っている必要があり、選果(とれた作物を大きさなどで分ける作業)や加工、販売だけをさせることはできません。
- 雇い方は、農家や農業法人が直接雇う形、JAなどが雇って農家の農作業を請け負う形、派遣会社が雇って農家に派遣する形の3つです。派遣元になれるのは、農業や農業に関連する仕事をしている事業者か、そうした事業者や自治体が出資したり経営に関わったりしている会社などに限られます。
- 労働時間・休憩・休日は、日本人と同じく労働基準法の決まりが当てはまりません。ただし、長時間労働にならないよう管理して休みを決め、深夜の割増賃金は払います。受け入れる前には「農業特定技能協議会」に入り、加入通知書が届くまで概ね2週間程度かかります。
仮の例:これまで短い期間のアルバイトしか雇ったことのない野菜農家が、特定技能の人を直接雇えるか仮の数字- 2025年4月〜6月に雇ったアルバイトのAさん
- 3か月
- 2025年8月〜10月に雇ったアルバイトのBさん
- 3か月
- 2人の期間を足した長さ(数に入らない)
- 6か月
同じ人を続けて雇った一番長い期間3か月(足りない)
※ 人と期間は、数え方を見せるための仮のものです。直接雇うには、過去5年以内に同じ人を6か月以上続けて雇った経験が要り、短い雇用を足して6か月にしても認められません。
※ 間を空けずに人を雇って6か月以上労務管理をしていれば、同じ人でなくても、それに準ずる経験として認められます。この例は7月が空いているので、どちらにも当たりません。この農家には、派遣を受けて、講習を受けた人を派遣先責任者に選ぶ道があります。
させられる仕事
農業分野の仕事は、次の2つの区分に分かれています。「栽培管理」は作物を育てる作業、「飼養管理」は家畜を飼って世話をする作業、「集出荷・選別」はとれた作物や卵・牛乳などを集めて分け、出荷する作業のことです。
- 1号の人には、在留している間を通して、栽培管理か飼養管理の仕事をしてもらう必要があります。なので、選果の作業だけをさせることはできません。
- 日本人の従業員もふだんしている関連の仕事を、ついでに頼むことはできます。たとえば、自分の農場でとれた作物を使った加工や、その運搬・販売、冬の除雪です。ただし、関連の仕事だけをさせることは認められていません。
- 耕種農業の試験に受かった人は畜産の仕事に、畜産農業の試験に受かった人は耕種の仕事に、基本的には就けません。ただし、耕種と畜産の両方をしている農家で、日本人の従業員もふだん両方の仕事をしているなら、もう一方の仕事も関連の仕事としてしてもらえます。
- 1つの農家が受け入れられる人数に、技能実習のような上限は設けられていません。
建設分野や介護分野には、会社や事業所ごとの人数の上限があります。分野によって違うので、建設分野の特定技能と取り違えないようにしてください。させたい仕事が農業分野に当たるか分からないときは、地方農政局の経営支援課(北海道は北海道農政事務所、沖縄は沖縄総合事務局)に問い合わせると確実です。
3つの雇い方
特定技能の人は、農家や農業法人に直接雇われるだけでなく、JAなどに雇われる形や、派遣会社に雇われて農家に派遣される形でも働けます。誰が仕事の指示を出すかと、何軒もの農家で働けるかが、形ごとに違います。
農業分野の3つの雇い方農家・農業法人が直接雇う
- ・仕事の指示を出すのは、雇った農家
- ・別の農家で働くには、雇用期間が終わってから新しく契約し、在留資格の変更許可を受ける
JAなどが雇い、農作業を請け負う
- ・JA・酪農ヘルパー利用組合・コントラクター組織(農作業を請け負う組織)などが雇う
- ・何軒もの組合員の畑で働ける。指示を出すのはJAなどで、農家は出せない
派遣会社が雇い、農家に派遣する
- ・仕事の指示を出すのは、派遣先の農家
- ・何軒もの農家に派遣できる。派遣先の農家も、労働・社会保険の法令を守っている必要がある
農業で派遣が認められているのは、冬は農作業ができないなど季節で忙しさが大きく変わることと、同じ地域でも作物によって収穫や植え付けの時期が違うことがあるからです。なので、忙しい時期だけ人手がほしい農家や、作物の違う産地の間で人を回したい地域には、派遣が合います。
一方、1年を通して同じ畑や牛舎で働いてもらうなら、直接雇うほうが、仕事の指示も支援も自分の農場の中で完結します。農家が自分で指示を出したいのにJAの請負の形にすると、指示を出せるのはJAなので、形を決める前に誰が毎日の指示を出すかを考えておいてください。
派遣元になれる事業者
派遣元(外国人を雇って農家に派遣する会社)になれるのは、労働者派遣事業の許可を持ち、次の4つの類型のどれかに当たる事業者です。そのうえで、法務大臣が農林水産大臣と協議して、適当と認めた事業者に限られます。
- ①の「農業」は農業経営をしていることです。「関連の仕事」は、農畜産物の集荷・加工・販売や、農業のやり方の指導(営農指導)をする生産者団体のことで、JA・JAの連合会・農業者の事業協同組合などが当たり得ます。
- ③で経営に関わっている自治体やJAなどは、受け入れている間ずっと関わり続ける必要があり、関わらなくなると派遣元に当たらなくなります。
- 派遣元として認められる期間は3年で、過ぎると改めて確かめられます。また、派遣先は、派遣元が苦情の処理も含めて雇用管理をきちんとできる範囲の地域に限られます。
JA本体が労働者派遣事業の許可を取ることに、農協法の制約はありません。ただし、派遣事業の許可には「純資産額が負債総額の7分の1以上」という条件があるので、貯金や貸付けの事業(信用事業)をしていて貯金の多いJAでは、許可を取れない場合があります。
派遣元は、在留の申請に、派遣形態の誓約書を付けます。誓約書の主な欄は次のとおりです。
農業分野において派遣形態で特定技能外国人の受入れを行う特定技能所属機関に係る誓約書(分野参考様式第11-3号)の見本数字は仮
| 特定技能所属機関 氏名又は名称 | 〇〇アグリサポート株式会社 | |
| 誓約事項1 | ①〜④のどれかに丸 | ① |
| 誓約事項2・3 | 派遣先の条件 | ② |
| 誓約事項4 | 協議会の構成員 | ③ |
| 誓約事項7 | 支援を任せる先 | ④ |
| 添付書類 | 派遣事業の許可証など | ⑤ |
- ①派遣元が4つの類型のどれに当たるかに丸を付けます。①なら営農証明書・耕作証明書・出荷の伝票など、②なら株主名簿の写しなど、③なら役員名簿などを付けて示します
- ②派遣先の農家が、労働・社会保険などの法令を守っていることと、6か月以上の雇用経験があるか、講習を受けた派遣先責任者がいることを誓約します
- ③様式には「受け入れた後4か月以内に構成員となる」という選択肢が残っています。ただし、2024年6月15日以降は、初めて受け入れる場合でも、在留の申請のときに構成員であることを示す書類が要ります
- ④支援を登録支援機関に全部任せるなら、協議会に協力する機関に任せることを誓約します
- ⑤労働者派遣事業許可証の写しと、協議会の構成員であることを示す書類を付けます。派遣先の農家が書く「派遣先事業者誓約書」(第11-2号)も出します
農業分野で特定技能の人の派遣を認められた事業者のうち8社は、2024年4月に「特定技能派遣事業者コンソーシアム」をつくり、同じ年の10月に派遣で働く外国人のための人権方針を公表しています。派遣元を選ぶときは、農林水産省の農業分野のページにある参考情報も見ておくと安心です。
受け入れる側に要る経験
特定技能の人を直接雇う農家やJAなどには、過去5年以内に、同じ人を6か月以上続けて雇った経験が要ります。技能実習生を雇った経験も数に入り、法人なら、経営している役員が個人で農業をしていたころに雇った経験も入ります。
受け入れる側に要る経験直接雇う農家・JAなど
- ・過去5年以内に、同じ人を6か月以上続けて雇った経験
- ・無ければ、過去5年以内に6か月以上続けて労務管理(人を雇って働いてもらう管理)をした経験
派遣を受ける農家(派遣先)
- ・過去5年以内に、同じ人を6か月以上続けて雇った経験
- ・無ければ、派遣先責任者講習などを受けた人を、派遣先責任者に選んでいること
- 短い雇用を足して6か月を超えても、この条件は満たしません。冒頭の計算例のように、AさんとBさんを3か月ずつ雇っただけでは足りません。
- 労務管理の経験は、同じ人を管理した経験でなくてもかまいません。AさんとBさんの労務管理が途切れずに続いて6か月以上なら認められ、たとえば、親の農業経営で労務管理をしていた子や、農業法人で労務管理をしていた従業員が独立する場合が当たります。
- 派遣先責任者は、派遣を受ける農家の側で、派遣で来た人を受け入れる管理を受け持つ人です。そのための講習は、たとえば都道府県労働局が派遣先向けに開いています。
なので、人を雇った経験がほとんど無い農家が初めて受け入れるときは、派遣を受けて、講習を受けた人を派遣先責任者に選ぶ道があります。直接雇いたいなら、まず日本人のパートなどを6か月以上続けて雇い、経験をつくってから受け入れる順番になります。
労働時間・休憩・休日
農業で働く人には、日本人も外国人も、労働基準法の労働時間・休憩・休日の決まりが当てはまりません。ただし特定技能の人については、運用要領で、長時間労働にならないよう労働時間を管理し、休憩と休日をきちんと決めなければならないとされています。
- 働く時間と休みは、本人の希望も聞き、労働基準法の基準を参考にして、雇用契約で決めておきます。忙しい時期でも、休日を決めないまま働き続けてもらうことはできません。
- 決まりが当てはまらないかどうかは、事業所ごとに決まります。農作物の加工や製造の事業もしている場合は、都道府県労働局に相談してください。
- 2027年4月から始まる育成就労では、農業分野でも、労働時間・休日・休憩・時間外の割増賃金の扱いを労働基準法に合わせることが条件になります。特定技能の人と育成就労の人を同じ職場で雇うなら、2つの扱いをどう分けるかを先に決めておくと安心です。
試験と技能実習からの移行
農業分野の特定技能1号になるには、技能の試験と日本語の試験の両方に合格するか、農業の技能実習2号を良好に修了している必要があります。
JFT-Basic は国際交流基金の日本語基礎テスト、N4 は日本語能力試験(JLPT)の級のことです。なお、2026年1月23日の運用方針では、技能の試験の名前が「農業特定技能1号評価試験」、日本語の水準が「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と書かれているので、受け入れる前に新しい案内も確かめてください。
技能実習から移る人は、次のとおりです。
- 耕種農業職種(施設園芸・畑作・野菜・果樹)か、畜産農業職種(養豚・養鶏・酪農)の技能実習2号を良好に修了した人は、技能の試験も日本語の試験も免除されます。たとえば、養豚の実習を終えた人に酪農の仕事をしてもらえるように、耕種なら耕種農業全般、畜産なら畜産農業全般の仕事ができます。
- 免除を受けるには、実習の終わりに受けた農業技能評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書を出します。この試験に受かっていない人は、特定技能の試験に合格するか、実習先が作った評価の文書を出します。
- 農業以外の職種の技能実習2号を良好に修了した人は、日本語の試験は免除されますが、農業の技能の試験には合格する必要があります。
2号になるには、2号の試験に合格したうえで、複数の従業員を指導しながら作業の工程を管理する立場で2年以上か、農業の現場で3年以上の実務経験が要ります。本人から求められたら、実務経験を証明する書面を渡すことも、農業分野の決まりです。
農業特定技能協議会
受け入れる農家や派遣元は、在留の申請の前に、農林水産省が設けた「農業特定技能協議会」に入ります。2024年6月15日からは、初めて受け入れる場合でも、在留の申請のときに構成員であることを示す書類が要るようになりました。
農業特定技能協議会に入るときのこと- 1WEBで申し込む農林水産省の農業分野のページにある「農業特定技能協議会」WEB申請(加入)から、名前や住所などを入れて申し込む
- 2事務局の確認を待つ農林水産省が申し込みの内容を確かめる。必要なときは、電話かメールで連絡が来る
- 3加入通知書を受け取る申請からおおむね2週間で、メールで届く。2週間〜1か月たっても連絡が無ければ、事務局に連絡する
- 4通知書をとっておく2回目以降の受け入れの申請でも使う
- 入会金や年会費はかかりません。加入すると、住所の都道府県を受け持つ地域協議会の構成員にもなります。
- 加入したあとは、協議会の情報提供・意見の聞き取り・調査などに協力する必要があり、協力しないと受け入れられなくなります。派遣で受け入れるときは、派遣先の農家も協議会に協力します。
- 特定技能の人が1人もいなくなったときは退会の申請を、代表者や住所が変わったときは変更の申請をします。
- 加入しているかは、農林水産省のページの「加入者一覧表」で確かめられます。2026年10月18日時点で載っているのは、2026年8月31日現在の版です。
協議会の加入と、在留の申請・健康診断などの順番は、特定技能の外国人を受け入れるまでの流れと期間で確かめられます。
支援を任せる登録支援機関
農業分野では、登録支援機関は農業特定技能協議会の加入の対象外です。その代わり、支援を全部任せるときは、委託先の登録支援機関が協議会の活動に協力すると約束する「登録支援機関誓約書」(分野参考様式第11-4号)を書き、在留の申請に付けます。
登録支援機関も協議会に入る必要がある食品産業特定技能協議会とは、ここが違います。飲食料品製造業分野の扱いは、飲食料品製造業分野の特定技能で確かめられます。
派遣で受け入れるときは、雇い主は派遣元です。なので、支援計画を作って支援をするのも、自分でできないときに登録支援機関に任せるのも派遣元で、派遣先の農家が委託先を選ぶわけではありません。
登録支援機関の一覧に載せている33機関の公式サイトを2026年10月18日に開き、農業への対応を書いているかを確かめると、次のとおりでした。
掲載33機関の公式サイトで、農業への対応を確かめた結果
- 数えたのは、支援の対応分野・支援の実績・取扱業務分野に「農業」をはっきり挙げている機関です。制度の分野の一覧を載せているだけの機関、相談の対象として分野を並べているだけの機関、人材の紹介だけを案内している機関は数えていません。
- 料金を公開している機関も、農業だけの料金表ではなく、分野に共通の料金でした。自社で農業の派遣をしていると書いている機関は、33機関の中にありませんでした。
- 農業への対応を書く機関のうち、技能実習の監理団体の許可も持つ機関は1機関でした。
公式サイトに書いていなくても、農業分野の支援をしている機関はあります。なので、「農業分野の特定技能の人を何人支援していますか。登録支援機関誓約書(分野参考様式第11-4号)を書いてもらえますか」と聞いておくと確実です。
各機関の農業への対応は、登録支援機関の一覧の各機関のページで見られます。相手が入管庁に登録されているかは登録支援機関が本当に登録されているかの確かめ方で、委託料の見積もりの読み方は登録支援機関の委託料の相場と見積書の読み方で確かめられます。
決める前に立ち止まる場面
2027年4月からは、技能実習に代わる育成就労が始まり、農業分野では育成就労でも派遣での受け入れが認められます。育成就労と特定技能の関係は、育成就労と特定技能・登録支援機関の関係で確かめられます。
今日やること
- 1雇い方を決める直接雇うか、JAなどの請負か、派遣かを決める。直接雇うなら、過去5年以内に同じ人を6か月以上続けて雇った経験があるかを書き出す
- 2協議会に申し込む加入通知書が届くまでおおむね2週間かかるので、農林水産省のページの「農業特定技能協議会」WEB申請(加入)から、在留の申請より先に申し込む
- 3委託先に聞く登録支援機関の一覧で農業に対応する機関を選び、「農業分野の特定技能の人を何人支援していますか。登録支援機関誓約書を書いてもらえますか。1年目の総額の見積もりをもらえますか」と聞く